以下レストア担当竹内のメモです。
本機は全体として音がよく伸び、滑らかな音楽再生が持ち味です。
おっとりしているようで、一旦パルシヴな音が刻まれていると素早く反応しているのを見ると
なめらかさとは緻密性が形を変えたものだと認められる再生音です。
細部に目をやると音楽としての音が濃密に絡み合っているのが手に取るように理解されます。 クラシック再生では音の密度の高さにより重厚なハーモニクスをよく表現しますし、ジャズを聴くと強烈な実在感が迫ってはきますが、けっしてゴリ押しはしないのです。
自然さを常に意識している、こうした感覚を得られるのは珍しいことです。 TD124の設計人の意思がこれほど明快に出てくるのは、これまでのTD124にはないことでした。 本機の音楽再現力の長所は音の吹き抜け感にあります。 いくら重厚で立派な音であったとしても音が抜けてゆかないと、音楽がエグミに浸食されていきあと味が悪いものに変質してしまうからです。 それと変拍子で独特の冴えを見せるのも聞いていて楽しい。 音をさばく力が抜群に良いので、音にニゴリがなく、明快に変化するリズムが素直に表現される。
クラシック再生におけるナチュラル・ディストーションの発生には精妙さが漂い、このようになるべき、と確固たる構築が認められます。 今様のプレイヤのように音が後ろに下がることなくきっちりと定位置に音像は据わっています。 電気楽器のディストーション再生はやや沈みながらブレイクする様式をとりますが、おかげで音楽が浮つくことなくチャラ感がありません。 これは聞く人によって好みがわかれるところでしょう。 ポップスが重厚に響きすぎてしまうのです。
キャビネットはスイスオルトフォン製ST104オリジナルを補強再塗装したものです。
塗装後半年以上経過しているため、きれいに乾いていて塗装面も落ち着いており、音への貢献度も高いものです。
ご購入後、欠品部品を手配したり、修理を依頼する必要のない、極上品です。
このセットに相応しい、SME3009S2初期型と中期型の良い保存状態のもの(すべてオリジナル部品で改造や後発部品に取り換えられていないもの、ナイフエッヂの刃がかけていないもの、オリジナルアームケーブル等)も在庫していますので、ご希望の方はお知らせください。