オーディオレコードマニアの方々が使用されているレコードプレイヤーは、おおよそ3種類に分類されるます。 
海外製品のベルトドライブタイプ、国産のダイレクトドライブ、そしてヴィンテージのアイドラータイプである。
それぞれに特長があり、海外製品のベルトドライヴは、小型のモーターとベルトで以外に大きめの質量のプラッターを
のせているもので、各パーツに新素材を使用し、今現在最新の技術を駆使したものとなっています。 
国産のダイレクト型は70年代に原形があり、やはり新技術をたくみにとりいれコストパフォーマンスにすぐれたものである。
この二種類はいずれも普及品、又は超ド級のものまで各種さまざまです。
ヴィンテージタイプは古典的なアイドラードライブで、代表的なものにEMT、ガラード、トーレンスがあり、アメリカ製品にも中々おもしろいものがあります。

その音質
けっして安価ではない海外ベルトドライブプレイヤーであるが、それらにふさわしい再生音はもちろんユーザーにあたえてくれるはずです。 その設計思想は大まかに言えば徹底した振動のアイソレートとノイズの消去です。
振動に関してはプラッターに対して、小型のモーターを使用し細めのベルトでドライヴするもので、プラッターは新素材の
導入等によりプラッターの鳴きを制動しています。 その音質は音の粒立ちと滑らかさ、きちんとチューニングされた時SN比のよさは特筆ものです。 しかし、よく注意してきくとその味となる音の粒立ちと艶が、いわば一人で立っているがごとき感があります。 音と音が手をたずさえてという感は無く、時々さみしくなってしまう事があります。 
国産ダイレクトベルトドライブはよく作られており、現代技術が70年代のそれとは明らかに異なると感じられ、トルクも充分にあり、かつて初期型にみられた欠点をカバーしているとは思われますが、DDの長所であり短所でもあるシンプルさが
両刃の剣です。 又、回転とプラッターの慣性質量の相互関係におけるパラドクスがいつもきまっています。 
音質については、実はDDほどこういう音と言う事がむずかしく、ただ言える事は音のたたずまいという点から個人的に魅力を感じません。
アイドラードライブ型は、ユーザーがいじっていちばん面白いものですが、あくまで完全に近い形で、レストア済みという
条件付である。 メンテナンスにおいてオイルの注入、アイドラースピンドルシャフト、トランスミッション系のクリーニングと細かな調整等、再生音はユーザーのセンスしだいでいくらでもポテンシャルを向上させる事ができるのであり、セッティング等においてもそのメーカー指定のキャビネットがある場合は、それに取り付ければしかるべき再生音が約束されます。
EMTは現在世界中で一番日本にあるのではないかと思われ、930、927はレコードの音出し用であり927DSTは検聴用であるのは皆様ご存知のとおりです。 雑誌等でもさかんに取り上げられ、あくまでプロユースのレコードプレイヤーであり
カートリッジイコライザー込みで設計されたので、その性格を充分把握していなければ良い結果を得られません。 
その再生音は音出しという役割上、切れ込みや音色のコントラストをやや強めたものであり、一般コシュマーユースの製品
とは性向を裏腹にするものです。 EMTプレイヤーからプレイバックスピーカーまですべてスタジオ仕様にしたのち、各自
おのおのの好みによる機材を投入し、音を組み上げていく、これらについての私の理想です。
ガラード301については車的表現言語で言えば、「直線番長」でありブラインドカーヴにもおそれず突入し、パワーで路面をねじふせてコーナーを一気にぬけてしまう、そんな爽快感があるのです。 故、エンツォがベントレーを評して言った
「世界一早い高速トラック」がぴったりだと思うのである。 音のたたずまいがすっきりと表出され、あたたかさとつめたさの間の絶妙な温度感がきわだち、音の安定感にすぐれた、ガラードは良いプレイヤーです。
音の秘密のひとつには巧みな負荷抵抗のコントロールによるものであり、わざとプラッターを回さないというのも、プレイヤーにおける立派な設計思想のひとつであります。
トーレンスTD124の特長の一つはEMT、ガラードにくらべ、格段に小型のモーターを装備しているという事です。
大型モーターは振動さえクリアーすれば、低音の伸びと制動にきわめて有利に働き、いわばリムドライブ用モーターの王道です。 トーレンスのモーターは見かけによらず強力で、それを可能にしたのがモーター内部パーツの精度であり、ベルトを介してステッププーリーそしてアイドラーにより5kgのプラッターを軽々と回す事を可能にしています。 
そのトルクはあくまでフルレストアしたものという条件付ですが、ガラードをも凌ぐものがあります。 
TD124にはMk.1、Mk.2の二種類があり、それぞれその時代の求めに応じて作られたものです。 
Mk.1の初期型はモノーラルとステレオの過度期にあたり、モノーラルの重厚さからステレオのはなやかな音に徐々にシフトさせていたようです。 初期型、すなわちやや重めの針圧に対処するために各部分のパーツが頑丈に製造され、やや鳴きをおさえて音のうわつきを抑制しています。 そして中期、後期になるにしたがいステレオ対応として音の傾向を
チャンネル・セパレーションの向上に振り付けていたようです。 とくにシャシーやステッププーリー・アイドラー等をやや薄手にして共振をきれいにするように作られているようです。 
Mk.2は完全にステレオ時代のものですがモーターはMk.1と同じですのでターンテーブルが軽くなった分すばやく回ります。その初動動作はベルトドライブやアイドラードライブ型よりDDモーターに近い回り方をします。 
トーレンスTD124による再生音は表現するのが大変むずかしくやはりここは当時のキャッチフレーズであった
レコードプレイヤーのロールスロイスというほかはありません。




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現代アナログプレイヤー事情